音楽で食べていくとは その3
安達たけし
音楽界に飛び込み、そして仕事をしていくためには具体的な行動を起こさなければいけません。今回は特に、アーティストとしてその世界に飛び込んでいくために必要な行動について書いてみたいと思います。
プロモキットを作る:
プロモキットとは、自身(バンド)のプロフィール、音源、連絡先等を明記したアピール素材です。まずは、自分をアピールするためにプロモキットを常備し、それを必要とされる場面ですぐに手渡せる状況にしておかなければいけません。
もし、そのチャンスと巡り合った時に作り始めるようであれば、その時点ですでに手遅れと思った方が良いでしょう。その他、レコード会社へ送付、オーディションへ送付、著名アーティストへ送付、ライブ出演のための素材など、用途は多岐に及びますので数もある程度用意しておいたほうが良いでしょう。
具体的な内容物:
以下に最低限、これだけは用意しておきたい物を書き出します。
1. プロフィール
自分の氏名、年齢、性別、住所、電話番号、経歴、ライブスケジュール等を書きます。内容は丁寧に、文面に気を遣い、そして必ずタイプしてください。
2.宣材写真
「宣材」とは宣伝材料の略です。「宣材」というくらいですから、写真は必ず自分をアピールできる一番良い写真を添付してください。
バンドの場合は、全体写真があると尚良いです。たとえ裏方の仕事を希望しているとしても写真は必要です。なぜならば、あなたをどう扱っていくか?を決めるのは先方です。
たとえ裏方希望でもその写真を見て表舞台に立たせるプロデュースをする可能性もあります。少しのチャンスでも絶対に逃さないように心掛けてください。
3. 音源
音源に関してはメディアが需要になってきます。今一番主流なのは、CD-Rです。ただし必ず白無地CD-Rを使ってください。
そしてその盤に必ず、自分の氏名と連絡先を明記してください。先方がプロフィールを紛失してもその盤を見て連絡することができるからです。
アイディアを駆使する:
プロモキットを作ることはプロ、アマを問わずアーティストとしての常識です。ということは、ただ作っただけでは、他との差別化が図れず、膨大な数のプロモキットの中に自分のものが埋もれてしまう可能性があります。
ここでは、私が出会ってきたアーティストが「いかにしてプロモキットを見てもらうか!?」のために実践しているアイディアをいくつか書き出します。
1. プロフィールの用紙は厚手で!
ある著名作詞家のプロモキットを見せてもらった時のことです。その方はプロフィールを厚手の紙で印刷していました。
その理由を聞くと「薄手の紙だとそのまま丸めてポイッて捨てられてしまうけど、厚手の紙は丸められないから、結果、捨てられないんだよねえ~!」と言っていました。
なるほど!ちょっとしたアイディアが人の目に止まるのだと学んだ瞬間でした。
2. 直接渡すときは透明の袋に入れる!
私が教え子に「プロモキットを作ってごらん!ただし、自分のアイディアを一つ必ず入れること!」と言いました。
早速、次の日に持ってきたプロモキットは透明なビニールの袋に収められていました。「どうして透明な袋に入れたの?」と聞くと・・・
「中身が見えた方が中に何が入っているか分かるし、何より見る気になるかなあと思ってやりました」と言っていました。これもなるほど!たしかに中身が見えるので私も自然と中を見てしまいました。
これもチャンスを逃さない方法の一つです。
誰に見てもらうか?:
プロモキットを作ったら、今度はそれを誰に見てもらうか!?が焦点になります。一般的に皆さんが考えるのがレコード会社、芸能事務所、音楽事務所へ送ることだと思います。
それはそれでとても重要ですのでチャレンジしてください。しかし、それだけではやはり、他との差別化は図れません。
そこで考えたいのは、音楽を必要としている人や企業は、どこに存在するだろう?ということです。
例えば、映画会社、広告会社、極端な話でいけば音楽イベントなどを企画する地方自治体など、発想すれば、いくらでも出てきます。
「音楽=音楽」ではなく「音楽=無限の視聴者」と考えてプロモーションするのは、一つの考え方だと思います。
また、レコード会社ばかりでなく、アーティストの個人事務所などへの送付も考えたいところです。
大手にはその規模に準じただけの多くのプロモキットが集まるので、なかなか目に止まることがありません。
しかしながら、個人事務所の場合は、規模が小さいので送られてくるプロモキットの数も意外な盲点で少ないことがあります。
規模は小さくても著名アーティストであれば、音楽界への影響や力は十分にありますので可能性が広がります。
以上のように人と違う観点で物事を見れるようになれば、効果的なプロモーションは個人レベルでも十分にできると思います。
第一歩を踏み出すためにも積極的に行動することが大切です。自分の音楽に自信を持って是非、行動を起こしてみてください。