音楽で食べていくとは その1
安達たけし
序章:「情報」と「現実」のギャップ
音楽を志す者にとって、常に問題になるのが「音楽で食べていけるか?」もう少し、具体的に言うならば「音楽が仕事として成立するか?」という部分です。
昨今、たくさんの専門学校、音楽大学が存在し、その中で心無いところでは「就職率100%」などの安易な言葉が乱立する学校も少なくありません。
しかし、音楽界の経済規模、仕事の特異性、またそれに従事する関係者の数などを考慮するならば、そのキャッチがいかに絵空事であり、非現実的なものであるかは誰もが理解できると思います。
ここでは「音楽=仕事」という部分にフォーカスを当て、真摯にその現状を検証してみたいと思います。
考察1:「音楽と金銭価値について」
そもそも音楽を金銭価値に変換すること自体、とても難しく、むしろ変換できないと言ったほうが正解かもしれません。
しかし、それでも「なぜ音楽を仕事として生活していくのが困難なのか?」ということに対してのみ論点を当てるとしたら、以下のようなことを理解できなければその志を達成することは難しいかもしれません。
まずアルバイトでも社員でもなんでもかまいません。その職についた時、初日から給料が発生しませんか?初日ということは、その職に対して誰もがビギナーのはずです。
にもかかわらず、金銭が雇い側から支払われる。つまり、世間と社会の一般常識は、ビギナーの時点から金銭価値をつけてくれるということなのです。
それでは、その一般常識を音楽に置き換えてみましょう。「ビギナーですがギター弾いています!」という人のライブを見に行くでしょうか?
「ビギナーですがCDを作りました!」という人のCDを買うでしょうか?つまり、音楽に関してビギナーには金銭価値は付かず、むしろ払う側であるのが常識なわけです。
音楽の世界では、まともにできて初めて0円という価値が付き、この0円を発生させることが芸術においては非常に困難であり生活源にできない原因なのです。
社会における初任給20万円に相当する音楽の初任給は0円と考えてもいいかもしれません。
であるならば、この0円から生活レベルの金銭にまで押し上げるのは、並みの努力では達成できないはずです。
そこには、音楽的なレベルはもちろんのこと人間性、努力、忍耐など全て常人以上のものを兼ね備える必要があります。