アレンジャーーが求めるギタリスト像 安達たけし
安達たけし
アレンジャーは自分の作曲編曲した曲を具現化するため、様々なミュージシャンを起用します。その様相は千差万別で、
例えば「ある一点においては突出した技を持っている個性的なミュージシャンだが他に関してはまったくダメ」という場合でも最終的にその人が必要であれば起用することもあります。
しかしながら、このようなシチュエーションは希な例であり、マクロな視野で見れば、やはり最低ラインにおいて、これだけはミュージシャンとして出来て欲しいというものがあります。
ここではあえてギタリストに的を絞り、アレンジャーがギタリストに求める必要不可欠なものを取り上げてみます。
読譜力
自分の好きな曲をただ弾くのと違い、他人であるアレンジャーの求めるものを弾く以上、譜面はお互いの意思疎通するための重要アイテムになります。
そこでギタリストには、その譜面を理解する力、つまり、ギターのテクニック以上に音楽理論の能力を要求することになります。
また、譜面は当日に渡される場合もあり、さらにその場での急なアレンジ変更などもあるので、初見力(sight reading)も要求されます。
ギタリストはとかく譜面を苦手とする人が多いですが、譜面の重要性を考慮に入れ、普段から譜面を読む訓練をしていくことはプロギタリストへの第一歩と言えるでしょう。
アンサンブル理解力
リード楽器(サックスやヴァイオリンなど)と違い、ギタリストには、単純にコード進行だけを提示し、そこから先は自由に弾いてもらうというパターンの依頼をすることが多くあります。
自由である以上、そこから先の演奏はギタリスト次第になりますが、この場合、「自分のギターと他の楽器の調和」という部分を考慮に入れられるか?が非常に重要なポイントになります。
アレンジャーの作る曲は、ギター主体の曲ばかりではありません。時には全体を支えるという位置付けの演奏もあれば、時にはある一部分だけをギターで補ってもらいたいという位置付けの演奏など様々です。
自分の技や音色を理解し、さらにそれをどのような場や雰囲気で使うかを考えることは、ギタリストの思考回路に常になければいけないことです。
つまり、ギタリストは音符を読むこと以上に自由を与えられたシチュエーションでどれだけアンサンブルに貢献できるか?ということが大事になるのです。
安定度
ギタリストは多くの機材を使うため、音色が安定しない場合があります。アレンジャーは、ギタリストの技はもちろん、その音色も含めて起用するわけですから、どのようなシチュエーションにおいても自分のサウンドを作れることが重要です。
「その場に機材が無いから自分の音が出せなかった」「機材がレンタルだから自分の音が出せなかった」などは言い訳にはなりません。自分のサウンドをいつも出せるようにレンタルであっても自前であっても、その研究を常にしておくことが必要です。
仕事態度
気心しれた自分のバンドなどでギターを弾くのと違い、アレンジャーの呼びかけのもと集まったミュージシャンの中の一人である以上、そこには初対面の人もいれば、大先輩もいたり、その人間模様は様々です。
そのようなシチュエーションにおいて、他人に迷惑をかけないためにも遅刻などは厳禁です。また、そういう場ではコミュニケーションも大事になるので、挨拶もキチンとできなければいけません。
至極当たり前のことのように聞こえますが、それが音楽に影響してしまう以上、アレンジャーの中では重要な位置を占めています。いくらギターが上手くても、それができなければ二度と仕事は依頼しないという例も多々あります。
プロギタリストを目指すのであれば、ギターのテクニック以上に仕事態度は、自分の中で重要な位置付けにしておくべきでしょう。
以上の他にもアレンジャーが求めるギタリスト像はたくさんありますが、この4点においては、ギタリストである誰もがクリアできていなければいけない必須事項として考えてもらいたく思います。